間取りを考える時に、家族間のコミュニケーションを重視する方は多いと思います。 しかし実際には、職場までの所要時間、周辺環境、そして家賃やローンといったことを優先してしまいがちです。 中でも「場所」を優先すると、地価や競争率が高くなり希望する「間取り」とは反目してしまうことが多いと思います。

利便性と経済的な条件を満たしながら、団欒の場を確保した理想の間取りとはどんなものなのでしょうか。 ここでその答えを見つけることは出来ませんが、なにかの参考になれば。

郵便受けに毎日欠かさずマンションや分譲住宅の広告が入っています。一瞥する程度ですが、どの物件の間取りも変わり映えがせず画一的であることがほとんどです。 特にマンションや集合住宅に顕著なのは何故なのでしょう?

集合住宅によくある間取り

例えば、2LDKならば玄関からすぐの北側に1部屋か2部屋。そしてこれが子供部屋として使われるケースが多く、中廊下を進んで右側にキッチン、左側にバス・トイレ(または左右が逆)。奥まった南向きの空間にリビングダイニング、それに面した部屋が夫婦の寝室といった構成を想定した配置でしょう。

これは、限られたスペースにより多くの戸数を確保して価格を抑えることと、それぞれに3時間以上の日照時間を考えると必然的に間口が狭く細長い間取りとなります。更に資産価値や将来の売却まで考慮した間取りなど、特定の人に満点評価されるのではなく誰にでも合格点であるような総合バランスを考えた場合、これ以上は不可能な気さえしえす・・・。

戦後の住宅需要と間取り

太平洋戦争の終結から数年経過した頃、首都圏や大都市周辺には職を求めて流入してきた人で慢性的な住宅不足の状態でした。更に朝鮮戦争の特需も追い風になり、多くの集合住宅が望まれ建設されることになります。 そこで必要とされたのが標準モデルとなる間取りで、配慮されたのは主に以下の点でした。

  • 所謂、団塊の世代が対象
  • 就寝スペースと食事スペースを分ける(寝食分離)
    • 日本家屋の続き間と外廊下 → 個室と中廊下へ
  • 内風呂を備えた間取り(※当事は母屋と離れた外風呂か銭湯が主流だった)

そして1951年に旧公団の「51-C型」は;

  • 寝食分離
  • 就寝分離(子供部屋)
  • ダイニングキッチンによる家事軽減
  • テーブルとイスによる生活

を軸にしたモデルを提唱して、後に民間の業者へも普及していったようです。

70年代になると

2006年ごろから続いている原油価格の上昇には辟易ですが、オイルショックのあった70年台にも物価は上昇しました。 それに伴い住宅価格も急上昇。同時にインフレや構造欠陥問題といった社会的な背景もあり、安全・良質なマンションを低価格で供給するために徹底した合理化・効率化が行われました。 画一化した間取りの方が資材費や建設期間を抑えられるわけですね。

2DK

http://wiki.zakka56.com/img/2DK.gif

主に一人暮らしか夫婦二人で暮らすモデルでしょうか。 換気設備技術の進歩により室内に風呂を設置することが可能になります。 またコストダウンのためにも水周りは一箇所に集中させた方が経済的。

3DK・nLDKへ

http://wiki.zakka56.com/img/2LDK.gif

2DKに暮らしていた夫婦に子供が出来、その成長につれて、独立した子供部屋が必要になります。 夫婦+子供2人とすると、ダイニングキッチン、夫婦の寝室と各子供部屋の3DK。プライベートの確保も重要な条件なので間取りの中心に各部屋をつなぐ廊下が設計され、さらに、家族団欒のスペースとしてゆとりのあるリビングの要望が強かったのでLDKへとシフトしてきました。(ちなみに"DK"や"LDK"は日本独自の表記)。

こうした経緯で現在はnLDK式の住宅が大半を占めています。そして、資産価値としての一面も画一化した間取りに成らざるを得ない要因です。 どんな好みの人にとっても平均点をクリアしなければ競争率が減り「欲しい人が少ない≒価値が下がる」という市場原理にさらされます。その一方で、リビングと離れた子供部屋は、親子間のコミュニケーションやお互いの気配を感じるのには弊害があるとも言われています。 子供部屋不要論まであったりしますが...

典型的な日本家屋は、武士は食わねど高楊枝的?

従来の日本家屋に見られる続き間は、武家屋敷に端を発していて、主にゲストと家主が会する間とその控えの間として考えられていました。 そこで暮らす住人は、好条件の位置から追いやられた部屋に、つつましく生活していたようです。こうしたゲスト優先の間取りは、訪問者に対する家主の考えの一端を表していると言えそうです。関連:武家屋敷

部屋と部屋は障子や襖で仕切られていて、各部屋の外側を縁側が配置されていて、部屋を区切る襖を外せばひとつにつながった空間にすることが容易です。 これは各部屋に風を入れるためにも都合が良い反面、家族間のプライベートは極めて軽視された間取りなので現代にはマッチしません。

現代では、南面のリビングが家屋の中心とみなすのが一般的で、家族同士・ゲストと会うフォーマルな空間としての役割も担っています。 集合住宅の場合、家の顔である玄関と離れてしまっているのが残念ですが。

30年/55年/77年 - 家屋の平均寿命

欧米に旅行へ行った際は、観光名所やショッピングも魅力的ですが、何気ない郊外の街並みに魅了される人も多いと思います。私もそのひとりですが、なぜそう思うのか漠然としたままでした。 先日、ある新聞記事に「日本の家屋の平均寿命は30年、アメリカは55年、イギリスは77年」であるという記事がありました。

仮に、日米英でそれぞれ30歳代の夫婦が家を立てようと奮起した場合はどうでしょう。 平均して55年や77年と長い耐用年数の家屋が立ち並ぶ町並みであれば、それらは小さな頃から見慣れた風景の一部となって、これから建てる自分たちの家もその景観にあわせようとするか、そうするのが当然のことのように思っているのかもしれません。 一方、家屋の平均が30年程度の日本では、このような心情的背景が芽生えにくいのではないでしょうか。

高温多湿と地震大国である日本の場合、平均寿命が30年程度になるのは地理的宿命のようにされてきました。 先ほどの新聞記事にもありましたが、地球環境時代に対応して建築材料を再利用するなど「200年住宅」が着実に進められています。それに加えてエネルギー効率のよい素材や設計、免震・耐震技術が進化しています。

さて、東京オリンピック前後の高度成長期から40年以上が過ぎ、30年の平均寿命で考えるとハード面では団地の老朽化、それに伴い若い世代が入居したがらないソフト面での問題も顕著になってきました。 職場への利便性、子育て環境、経済的な理由に加えて、地球環境も大切とされる時代です。 仕事と収入に見合う住まいではなく、どんな暮らしがしたいのかをどーんと中心に据えて、家族や仕事とのつながり、地域・社会とのつながりを考えてみると、住まいに対する違った選択肢が見えてくるかもしれません。


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Last-modified: 2008-12-04 (木) 15:16:55