昔ながらの伝統的な日本庭園を作るならば、「依頼主は、金を問わず、時間(期限)を問わず、顔を出さず」が最高の庭作りの条件だそうです。 素人の依頼主があれこれと口を出すと、庭師はそれに合せて仕上げるしかないことを揶揄した表現でしょうが、これではあんまり楽しみがありません。 主にゲストが目にするだろう庭に、自分で手を入れることを想定して書きます。

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庭の目的

一般家庭の庭の目的をざっと挙げてみると;

  • 隣家や通行人からのプライバシーの確保
  • (小さな)子供が遊ぶためのスペース
  • 洗濯物を干す
  • バーベキューなどアウトドアキッチン
  • ハーブなどの菜園
  • 自然を愛でるための空間
  • これらを併せ持つ多目的スペース

プライバシーや強い日差しを和らげる実用的な面と同時に潤いのスペースであることが分かります。 しかし、これらの全てを満たすことは大変困難かと思います。 どこにどのぐらいのスペースがあるのかといった把握と、何に比重を置くのかといった計画が不可欠となるでしょう。 限られた空間の中に同時にいろいろと詰め込むよりも、住人の年齢・構成に合わせて時間差で実現するのもひとつの方法かと。

西洋庭と和庭

欧米と日本の庭を比べると、当然ながら地理的・文化的な違いがあります。 西洋の建物は外壁で支えているため、外から各部屋に人が出入り可能なほどの大きな開口部や窓が取れません。 建物と庭はそれぞれ内部と外部といった隔たりがあり、建物が主、庭が従の関係になります。 こういった背景を基にする庭園は、シンメトリーなど緻密なデザインや鮮やかな色彩を通じて、人為的に創造可能な美しさの追求にエネルギーを費やしてきた様子が伺えます。

一方、日本的な美しさは左右非対称のアシンメトリーといえ、茶道や華道でいうところの「真行草」のように庭の構成も不等辺三角形が基本となります。 特に石を組んで鑑賞する感性は、恐らく海外では遺跡ぐらいなもので、このような心情が残っている先進国は珍しいといえるでしょうか。

石の顔 石にもそれぞれ表と裏があるそうです。 「気勢」という、石の持っているエネルギーに留意して耳を傾けると、 立てて使う石、横にする石、右に傾ける石、といった見栄えの好いポジションが分かるんだそうです(私にはわかりませんけど...)。

おもてなしの庭、位置と役割

前庭:門から玄関へと続くアプローチで外から眺めるスペース。

外から帰宅する住人ならばホッとする空間であり、ゲストにとっては最初に目にする空間となります。玄関まで直線でつなげるよりは、やや曲線にして奥行きを感じられるようにするのが一般的。

主庭(南庭):建物のメインになる部屋に面したスペース

大きな窓から入り込む光と風。 リビング・ダイビングは家族共有のスペースであり、健康的で爽やかな空間と考えると、通常は南側か東側に面しています。 従来の日本家屋のように柱や梁といった構造であれば大きな開口部が作れます。 欧米の住宅ほど内部と外部といった区切りが明確ではなく、部屋に面した庭からは、光や風のように入ってくるものばかりではなく、出て行くものもあります。 長い間ほうきが掃除用具の主役で"ゴミ"を掃き出していたことと関連がありそうです(掃き出し口)。 そして、そのひとつの出て行くものとして、"視線"があり、室内の住人や招いたゲストから見た庭が正面であると考えられています。 これは、移り行く四季に合わせて変化する庭を、自然の作品とみなした日本的な美感の表れでしょうか。

側庭:キッチン/勝手口に面したスペース(通路)

一般的には東側にキッチン・風呂があることが多い。

後庭(北庭):寝室に面したスペース、物置きなど。

中庭:各部屋への採光用スペース

スペイン、イタリアなどの南ヨーロッパの国ではパティオとして発展し、主庭の役割になると思いますが、日本の場合は極狭いか全く無い家庭も多いでしょう。 この庭は、複数の部屋からの景を要求される事になるので、他の庭とは違う性質になります。 位置的に多くの日照は望めなく、面する部屋への採光と風通しのためには、コケやシダ、日陰でも育つ低木が合いそうです。夜ならば光で立体的な演出も効果的。

庭のスタイル

  • 茶庭 えっと、あとで書きます
  • 雑木 昔ながらの日本庭園のような「刈り込みの庭」とは違い野山を思わせる様式
  • 枯山水(かれさんすい) 一般家庭では馴染みが薄いと思いますが、室町時代に禅寺の庭として起こった流れです。 行事や儀式を行うスペースとしても利用可能な玉砂利の空間とは違い、禅宗の思想が加味された修行目的の様式である事が伺えます。 主に石と苔で構成する独特のスタイルで、そそり立つ山や清流、島と波など大自然を表していて、見る者の内面に大きく依存するようです。 数年を掛けて徐々に造り上げていく他のスタイルと違い、一度造ってしまえば、手間いらずな完成形なのもこのためかと。

借景

展望の効く敷地であれば背景の山、海、森林、町並みなどを庭の景観の一部として取り込むと 非常に奥行きのあるように見える。

通景

敷地の長径を考え、この部分は帯状に植栽しない。 この中間部分に絞りを入れることで、一端に立って眺めた時に左右にも広がっているような錯覚に陥るのを利用して広く見せる。 ちなみに、この手法の最高傑作がベルサイユ宮殿の庭となります。敷地が大きいほど効果的な手法なので一般家庭には「おい!無理だろ!」な感じがありますが、ゴルフコースへ出た事のある方ならその効果を体験済みでしょうか。

庭の中心はどこ?

庭を目にするのが定まった一箇所からならば、そこからの景観が中心になり、中庭のように複数ならばそれぞれからの景観を考慮する。

  • 中心園:建物に対して直角の中心軸の中間が中心となる。
    • スペインのパテオなどはこの形式が多い。
  • 端心園:中心軸の端が中心となる。
  • 偏心園:中心軸から45度前後の角度になる線上が中心となる
    • 自然風な庭園はこの配置である場合が多い。

祖父の思い出

個人的な事ですが少し。 既に他界した祖父の家には、狭いながらも五葉松や紅葉のある庭でした。 夏の日の朝に、水道をひねりホースから木々へ散水した後、葉からキラキラと滴り落ちる水滴。 そして少しは離れてところに立ち、庭を見渡していた祖父の姿を思い出します。

当時、私はまだ10代前半でしたので、そんな光景を特に気に留めませんでしたが、ようやく、祖父のあの姿が何だったのかが見えてきた気がします。いや、ほんのちょっぴり。


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Last-modified: 2008-12-04 (木) 15:16:56